晴明殿下の人生激情

みんな大河ドラマの主役だった。

眠れない夜と雨の日には・・・

世の中、5人に1人が不眠症らしい。

私はそうではないけれど、どうにも眠れない夜の事だった。

外は雨が降っていて、趣味である気晴らしの自転車にも乗れない。
人間、ヒマだとロクな事がないというのは本当で、布団の中でもぞもぞと寝返りを打っていても、いいアイデアは生まれてこないものだ。

この時、私に魔が刺した。

決してやってはいけない『昔の恋人検索』を行ってしまうのである。

過去を振り返るのは、良い思い出なら良いなりに、悪い思い出なら悪いなりに、現実が嫌になってしまう。
要するに、あの頃は楽しかったなあ~と、あんな事があったから今が・・・まあ、いずれにせよため息をついてしまうのだ。

それでもタブーを破って検索したのは、まさに悪魔に魅入られたからだろう。
ちなみに、同級生検索でも良かったのだが、野郎の今を知ったところで、面白くも何ともないのだ。

数十人分の名前を、1人づつスマホに入れていく。

・・・当たり前の話だけど、もう40歳は軽く越えてるから、みんな名字が変わっているし、同姓同名もいて、ヒットしない。

ところが!?

明らかに3名、まさに間違いない女性に当たったのである。

1人目は音楽家になっていた。
はっきり言って、そんなに才能がある人とは思わなかったけれど、私と別れて運が向いたのかもしれぬ。
その情熱が音を捕らえたのだろう。

2人目は医療関係のオピニオンリーダーになっている。
この人は人妻だったのだが、まあ過激な人であり、このまま進んだらかなり危険な二人になったのではないか?
何はともあれ、現在の状況は大変だろうけど、元気でいて欲しい。

そして3人目・・・。
この女性は、私の初代彼女にあたる人である。
そういった意味で、とても感謝しているけれど、こんな形で消息を知りたくはなかった!

『〇〇容疑者を逮捕』

今回の私の人生で、3人の女性とはもう会う事はないけれど、贈る言葉があるならば、『ありがとう、さようなら、いつまでも元気でね 』

時が戻る事はもうない。

続・男と女の1994

昔は出会い系をやっていると、来る女性が大体2種類だと言う。

太ってるか痩せてるか。

実はこのパターンが崩れるのが、携帯が一気に普及し、誰もかれもがメールをやり出す2000年辺りなのであった。
しかし、それも時の流れと共にフェードアウトしてしまう。
そもそも、人口20万位の街では、出会う男も女も結局、前会った人というバツの悪い事になるのだ。

私の前に現れた女性は、これまたガリガリの主婦であった。
おとなしそうな顔をしていて、虫も殺さないような雰囲気を持っている。
だがしかし、後に私も何度も経験するのだが、こういった静かな女の方が、やる事がえげつなかったりする。

軽く挨拶してホテルの部屋に歩む。

私の仕事は、彼女の下着姿を撮影し、脱いだ下着を持ち帰る事なのであるが、一つ苦悩というのか、煩悩があった。

欲望を抑えられなかったらどうしよう?

強引に行ってしまえば、人を呼ばれるか、別料金を請求されるかも知れぬ。

部屋に入り、説明すると、するすると脱ぎ出し、あっという間にランジェリー姿になった。
彼女は、恥じらいとか背徳観がないというか、何とも思っていないようであった。

私もカメラを構えたのだが、これが不思議な事に、レンズを通して被写体を見ると、まるで猛禽類が獲物を狙う気持ちになったのだ。
あの高名な写真家の篠山紀信も、きっとこんな感じであろう。

本当ならば、3枚位撮ればいいのに、下着も脱いでもらって、

ハイ、ちょっと手で胸と股間を隠してみましょうかあ!?

調子に乗ってシャッターを切り続けた。

頭はクールで、足の角度などを完全に計算していた。

やがて終了。
私は女性に謝礼を渡し、下着を袋に入れると、妙な達成感を得て別れた。

もちろんやらなかったのは言うまでもないだろう。

男と女の1994

あれは花冷えのする3月の終わりだったか。
若かった私は、肩からバッグを提げて立ちんぼをしていた。
ラブホテルの橫で。

1994年頃には、今のような便利さはなく、愛を求める手段としては、ダイヤルQ2とかテレクラがお盛んであったんだが、さらに新たなピンクサービスが登場した。
それが『ブルセラ』である。

主に女子高生の下着とか制服を売買するのだが、要するに女性なら誰でもいいような感覚で、金が欲しい主婦なんかも、取り引き相手である。

では、私がランジェリーを求めているかというと、そうではなく、アルバイトだった。

当時、知人がレンタルビデオ屋の店長を していた。
この店というのが、今では全く見かけなくなった、ほとんどアダルトオンリーのチープな店舗なのだ。
ビデオだけでなく、怪しいグッズとかも売っていて、さらにビジネス拡張でブルセラも扱うようになっていた。
もっと言えば、かなりマニア向けの商品に『聖水』なんかもあった。
これはオロナミンのビンに入れて、小さな冷蔵庫で保管していた。
なんでも人によっては、一気飲みとか凍らせてウイスキーに入れるとか・・・。

そして、あまり大きな声では言えないけれど、後にこの店には捜索が入り、店長の手が後ろに回ってしまった。
こういった店は、よくツートンカラーの車が来るのだ。

話を戻すと、立ちんぼをしていた私が、店長から預かったバッグの中には、現金とカメラが入っている。
要するに、ホテル内でヌードを撮影し、下着を買って来いという事である。
着用者の写真があると高く売れるのだ。

そして本日のクライアントがやって来た。

つづく